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<薬膳コラム>
2017年5月15日(月)
【薬膳コラム】らっきょう 薤白
国際中医薬膳師、薬剤師、紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師の伊東千鶴子です。
5月5日の立夏を過ぎ、暦の上ではもう夏です。中医学では夏は五臓のうち、
心に負担がかかる季節で、動悸、不眠、多夢など心の不調が起こりやすいといわれています。
初夏の時期から、梅雨を経て本格的な夏を健やかに過ごせるように、
心の機能を補う食べ物を取り入れてみてはいかがでしょう。
心の機能を円滑にする(養心、強心)のは蓮の実、ひじき、豚心臓、ココナッツなど、
動悸、睡眠障害などを解消する(安神)のは玄米、アーモンド、ちんげんさい、
百合根、あさり、いわし、しじみ、ジャスミンなどが挙げられます。
さて、そろそろ、らっきょうが出回る時期ですね。五行学説に基づいて
世の中のあらゆるものを木、火、土、金、水の5つに分類すると、
五菜といって五臓を充実させる野菜には、心に対してらっきょう(薤)が配されています。
薬膳ではすべての食べ物に効能があると考えられていて、
らっきょうは胃や消化管にある未消化物質を取り除く(消食)、喘息、激しい咳、
しゃっくりなど気の上逆を改善する(降気)、消化吸収の活動を穏やかにする(寛中)、
陽虚を治す(補陽)、体内の老廃物が集結したものを解きほぐすように散らす(散結)とされています。
らっきょうの旬の時期は短いですが、塩漬けあるいは塩で下漬けした後、
醸造酢と砂糖や蜂蜜などで甘酢漬にすれば年中食べられます。
らっきょうの食用する地下鱗茎をそのまま、または湯通しして乾燥したものは
薤白(がいはく)とよばれる生薬で、胸痺の要薬といわれ、
胸の痛み、背中の痛み、喘息や咳、下痢の改善に使われます。
薤白を配合した括樓薤白白酒湯(かろがいはくはくしゅとう)、括樓薤白半夏湯(かろがいはくはんげとう)、
枳実薤白桂枝湯(きじつがいはくけいしとう)は中国最古の臨床医学専門書
「金匱要略(きんきようりゃく)」に収載されている胸痛の漢方薬です。
平成29年5月15日
国際中医薬膳師、薬剤師、紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子