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<薬膳コラム>
2023年7月1日(土)
【薬膳コラム】蝉退 センタイ
国際中医師、国際中医薬膳師、薬剤師、
紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子です。
「梅雨が終われば、夏が来る ほんとに早いわ」
森高千里さんが唄う
「私がオバサンになっても」には、
バカンス、水着といった真夏のイメージがあるので、
唄い出しはこうと勘違いしていました。
梅雨が明けると、
本格的な暑さがやってきます。
蓮の花が咲き、蝉の合唱が始まります。
外遊びが好きだった子どもの頃は、
蝉のぬけ殻をよく見つけたものでした。
蝉のぬけ殻が生薬なのはご存じでしょうか。
スジアカクマゼミ、ミンミンゼミ、
コマゼミ、ホソヒグラシ、ニイニイゼミ
又はそれらの同属動物の幼虫のぬけ殻は
蝉退(センタイ)という生薬です。
蝉退は淡褐色で光沢があり、
全形の整ったものを良品としていて、
抗痙攣作用、解熱作用、消炎作用、
鎮静作用があります。
蝉退は分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病
(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚搔痒症)に
使われる消風散(しょうふうさん)に配合され、
他の生薬とともに、患部の熱を取り除き、
かゆみを鎮める役割を担います。
神農本草経には、蚱蝉(さくぜん)といって、
クマゼミと同属の黒蝉(蚱蝉)の成虫が
小児驚癇(小児の痙攣性疾患)、夜啼(よなき)、
癲病(統合失調症様の疾患)寒熱を治すと、
記されています。
蝉は木の枝などに産卵します。
孵化した幼虫は3~4年ほど土の中で
過ごしまし(年数については諸説あります)、
夏に地上に出て羽化し、成虫となります。
ぬけ殻は幼虫が成虫になる
羽化の時に残したものです。
その後、成虫になった蝉は
1~数週間しか生きられないといいます。
先人が、短い期間にしか見つからない
蝉のぬけ殻や成虫までも、薬にしようとし、
後世に残したことに感嘆するばかりです。
2023年7月1日
薬剤師、国際中医師、国際中医薬膳師、
紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子