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<薬膳コラム>
2018年9月1日(土)
【薬膳コラム】重陽の節句
国際中医師、国際中医薬膳師、薬剤師、紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師の伊東千鶴子です。
9月9日は重陽(ちょうよう)の節句です。陰陽五行思想では偶数が陰、奇数が陽とされ、
陽の極数(最大奇数)である9が重なる日なので、こう呼ばれます。
五節句のうち、無病息災を願って七草粥をいただく1月7日の人日(じんじつ)の節句、女児の成長を祈り、
雛人形を飾る3月3日の上巳(じょうし)の節句、男の子の成長を祝い、立身出世を願う5月5日の端午の節句、
牽牛と織姫が出逢う7月7日の七夕は新暦にうまく移行して浸透しているのに、9月9日の重陽の節句は
あまり知られていないように思います。かつて宮中では菊花を浮かべた菊酒を飲み、無病息災と長寿を願う行事が
催されてきたというのに、新暦の9月9日では残暑厳しく、菊をめでる時季ではないからでしょうか。
中国では菊花にまつわる延命の伝説が数々あり、その美しさと香り高さも相まって、
邪や病を避ける菊花酒の風習が広がり、やがて日本にも伝わりました。「神農本草経」には
「菊華は風による頭眩や腫痛、目が脱けるように涙出するもの、死肌(皮膚の知覚障害を生ずる病気)、
悪風、湿痺(関節炎、慢性関節リウマチのような病)を治し、久しく服せば、血気を利し、身を軽くし、
老に耐え、年を延ぶ」とあります。キクの頭花を乾燥したものは菊花(きくか)と呼ばれる生薬であり、
熱感の強い風邪の発熱、頭痛、咳、のどの痛みなどに、目の充血や痛み、視力減退や目のかすみに、めまい、
ふらつきなどに適応し、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、釣藤散(ちょうとうさん)などの漢方薬に配合されています。
今年は10月17日が旧暦9月9日にあたります。その頃には秋も深まり、涼しい風が菊の花の香りを運んでくれるでしょう。
食用菊があれば、料理やお茶に取り入れて、お酒に浮かべてみませんか。
平成30年9月1日
国際中医師、国際中医薬膳師、薬剤師、紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子