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<薬膳コラム>
2017年6月15日(木)
【薬膳コラム】梅
国際中医薬膳師、薬剤師、紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師の伊東千鶴子です。
コラムをご覧下さいまして、ありがとうございます。
皆様がお住まいのところでは、今日も雨は降っていますか。
一説には梅雨は梅の熟す時期の雨なので、そう呼ぶようになったといわれています。
ここ数年、この時期の雨降りで外に出るのがおっくうな日には
旬の梅を使って梅干や梅酒作りなどに興じています。
手間はかかりますが、熟れた梅の香りに癒されます。
梅干は急な嘔吐や下痢、腹痛、風邪、暑気あたり、口の渇きに、
食欲増進、疲労回復、食中毒の予防などに広く食されてきました。
梅干の殺菌作用はクエン酸、リンゴ酸などの有機酸によるもので、
漬ける時に加えた塩で相乗作用を発揮するとわかっています。
平安時代、村上天皇の頃、疫病が流行した時に梅干を入れた
お茶を患者らに飲ませたところ、疫病は治まったとも伝え聞きました。
古くより食薬として用いられた梅干を、食欲がなくなりがちで
食べ物が腐りやすい梅雨時期にこそ召し上がってほしいです。
梅は中国最古の薬学書である神農本草経に記載があり、
その後、時代を経て様々な本草書に取り上げられています。
現代の薬膳における梅の効能は生津(津液を生み出す)、
収斂(汗の出過ぎや津液の漏れなどを引き締める)、
止咳(咳を止める)、化痰(痰を除く)、渋腸(腸を引き締める)です。
また梅の未成熟な実を燻蒸したものは烏梅(うばい)と呼ばれる生薬で、
慢性の咳や慢性の下痢に、下血、血尿、不正性器出血に、回虫による腹痛、
嘔吐などに単剤であるいは他剤と配合して用いられます。
未成熟の梅には身体に害を及ぼすアミグダリンという成分が含まれていますが、
梅漬けや梅酒などの加工や燻蒸の処理により分解されて減少するので、口にすることができます。
こうした方法を生み出した先人の知恵に感謝し、梅しごとを楽しみながら、
うっとうしい梅雨時期を健やかに過ごしたいです。
次の掲載は7月1日です。
平成29年6月15日
国際中医薬膳師、薬剤師、紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子